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インタビュー

東京女学館大学 教授 西山 昭彦 氏


一橋大学社会学部卒業、東京ガス株式会社入社。

ロンドン大学大学院留学。ハーバード大学大学院修士課程修了。
財団法人中東経済研究所勤務。株式会社アーバンクラブ取締役。
法政大学大学院経営学専攻博士後期課程修了、経営学博士。法政大学大学院社会科学研究科客員教授(政策科学専攻)。

2004年より東京女学館教授。

【特別インタビュー企画】 〜資格とキャリアプラン〜

Q.
景気が悪くなると資格ブームということが言われますが、中には「資格を取りさえすれば安心」というように、資格に依存してしまう方もいます。これについてどのように思われますか?
西山.
ヘッドハンティングに関する調査で、一番評価されるビジネスマンはどのような人かというものをやりましたが、その結果として、仕事の実績をあげるだけでなく、そのバックグラウンドの理論を固められる人材、いわば仕事をストック化できる人材の評価が高かったです。
例えば、人事に配属されたら、そこで結果を出すだけでなく社会保険労務士の資格を取るとか、経理に配属されたら簿記の資格をとるなどです。そういうふうに、「仕事を理論的に、体系的に考えられる人は、次の仕事でもきちんとしてくれるだろう」という意味で評価が高いのです。

Q.
資格を持っているだけでは高い評価はされないでしょうか。
西山.
資格は、持っているだけではなく、その過程で得た汎用性あるスキルや知識を会社の特定の問題に適用して使えるか否かが重要です。
そして、他の人ができない問題解決ができれば、会社にとって必要な人材として評価されますが、持っているだけならまだワッペンに過ぎないと思います。資格を持っているのであれば、他の社員よりそのスキルを生かせることが必要です。

Q.
会社内では、資格を持っている人材にどのような評価が与えられますか?
西山.
会社には、それぞれ会社独自のやり方がありますが、資格を取っていれば、そのスキルについてはどこでも通用することになります。そういった意味では、資格は個人のポータブルスキルとして評価されます。
ですので、資格を持つだけでも一応の加点にはなります。似たような業務を経験している人材のうち、どちらを異動するかというときに、人事は資格のある方を優先します。
また、転職する際には自己のスキルについて一定の質の保証ができます。

Q.
資格を含むキャリアプランについてお聞きします。
人によっては、キャリアプランをあまり立てずに、その時々で興味のあることを一生懸命やったほうがよいという方もいらっしゃいますが、それについてはどのようにお考えですか?
西山.
そのような意見もありますが、自己のキャリア形成について長期的なビジョンを持ってプランを立てると、それに関連する仕事に対してより愛着がわきます。
単に仕事をしている人と、10年後を見据えて仕事をする人ではモチベーションが違います。
実際、キャリア形成を明確にした上で希望する部署へ異動した人のモチベーションは非常に高いです。
そして、会社もこのことにだんだんに気付いてきたのです。
具体的な例として、ソニーは社内の人事異動について、社員の希望をできる限り尊重しています。
これは、もう25年前から行なわれていますが、長く続くのは、そのシステムが有効だからです。

Q.
男性の場合と違って、女性がキャリアプランを立てるとき、キャリアを長くしようとすると、出産をあきらめるなど、家庭が副次的になるハンディがあるように思えます。
こうした女性のキャリアプランについてはどう思いますか?
西山.
社会の大きな流れとしては、政府の支援策などが充実してきており、誰でも出産して復帰できる方向に向かっています。
そのため、女性の職場復帰の問題では、育児休暇をとった後の人事考課の改善が今後の問題になると思います。
例えば、昇格人事に関しては、同期で1年間の育児休暇をとった社員ととらなかった社員では、一般的な会社であれば育児休暇をとらなかった社員を1年多く働いたので評価します。
すなわち、育児休暇をとったことで、会社に対する貢献度が少ないと評価されてしまいます。
こうした点を変えていく必要があると思います。
武田薬品では、育児休暇をとったとしてもその一年はなかったものと考えて人事考課を行ないます。
要するに、現在の時点のスキル、実質を時価評価することになっています。

Q.
日本でも、一時期アファーマティブアクション※が議論された時期がありましたが、あれについてはどう思いますか?
西山.
本質的な平等を達成するために、初期段階では有効だと思います。そして、ある程度平等が実現できたらやめるべきだと思います。
また、アファーマティブアクションに限らず、逆差別の問題があるとしても、女性やマイノリティ支援策を設けることには賛成です。


※<アファーマティブアクション(Affirmative Action)>
差別是正措置。日本では、特に女性の職場環境の不利な現状を是正するための改善措置のことをいう。
具体的には、女性を優先的に雇用する、女性に関しては昇進基準を緩和する、などの措置をさす。

Q.
30代未満の最近の若者をみてどう思いますか?
西山.
先日大学で行った合同ゼミで感じたことは、最近の若者は打たれ弱く失敗を恐れる傾向があると思いました。
また、ハウツー志向が強いです。がむしゃらにやるというよりは、効率よく失敗しない方法を選んでいる気がします。
現在30歳未満の若者は、欲しい物がなんでも手に入る子供時代を送った人が多いです。そうすると、ハングリー精神が足りなくなります。
また、最近の若者は他人からの評価をすごく気にすることが多いですが、これは偏差値教育の弊害なのかもしれません。そうしたこともあって、上の世代と比べて萎縮してしまい大きなことができなくなっていると思います。

Q.
たしかにそうですね。
ただ、入社2〜3年目の若手社員を見ていると、出世欲のある社員と無い社員に二極化しているように思えるのですが、いかがでしょうか。
西山.
新入社員にアンケートをとってみると、「出世はあまりしたくない」という人が過半数です。
しかし、その人たちに対して10年後に同じアンケートをとると出世したいという人が増えます。これは、新入社員が会社の仕組みをよく知らず、出世した方が権限や仕事の大きさが増え、収入だけでなくやりがいにつながると徐々にわかってくるからでしょう。

Q.
ちなみに、ご自身がキャリアプランを立てたのはいつ頃ですか?
西山.
20代後半くらいです。留学したことが大きいと思います。
留学したとき講演などを何度かしたのですが、一緒に講演した外国人がすぐにパソコンで「×月×日○○大学にて講演」などと打ち、自分の履歴書を最新の情報に更新していました。
少々極端な話ですが、そうすることによって、自分をいつも売れる状態にし、さらに自分の経歴を常に確認し、自分に何が足りないかも気づくことができます。

Q.
若者がリーダーシップをとろうと思うなら、どのようなことを意識すればよいでしょうか?
西山.
大きな会社では、通常、若いうちからすぐにリーダーになることはできません。
そこで、擬似的な組織を立ち上げて、そこでリーダーシップをとるとよいと思います。例えば、異業種の勉強会を立ち上げるなどすれば、そこでは会社のしがらみもなく利害もありませんから、運営力が問われ、いろいろと勉強になります。
また、学生であるなら新しいサークルを立ち上げそれを運営したり、学外ネットワークを作ったりするのも良いでしょう。キャリア形成上はグローバル経験が大切ですので、若い時に海外の子会社などに勤務するのも一つの手段といえます。

Q.
よく、「企業に求められる人材」といいますが、実際のところ企業は多数存在し、それぞれ求める人材像にも多様なものがあると思います。
多くの企業で求められる人材として、共通するものは何だと思いますか?
西山.
ハーバード大のコッター名誉教授によると、活躍する人材は次の4つの要素を持っています。

@多様な職場経験をした人材、たとえば海外の経験がある人材。
A人を動員できる人材。
通常、自分の部署の社員ならばお互い協力するが、全く関係のない他部署の人間も巻き込んで自分の目標に向けて動員できるか。
Bミスへの対処ができるかどうか。
Cストレスマネージメントがどれだけできるか。
私は別の言い方になりますが、企画と実行力をあわせ持った人材と思います。
つまり本社のマーケティング支店での営業マン、両方で高い実績を上げられる人です。
フェ